2022年に締結されたMLBの労使協定(CBA)は、2026年12月1日午後11時59分(東部標準時)に失効します。オーナー側は、史上初となるサラリーキャップ(年俸総額の上限)の導入を求め、選手会は強く反対しています。交渉は2026年5月に始まり、10月8日には、MLBが、レギュラーシーズンを154試合に減らす案も出しました。5月以降の経緯と争点を、日付つきで整理します。ロックアウトという言葉の意味や歴史は、ロックアウトとはで扱っています。
※本記事の情報は2026年10月20日時点で、CBS Sportsの交渉タイムライン(2026年10月8日付)、ESPN、MLBトレード・ルーモアズなどの報道を基にまとめています。動きがあり次第、更新します。日付は、すべて米国の現地日付です。
いまの状況(要点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 現行の労使協定の失効 | 2026年12月1日午後11時59分(東部標準時) |
| 最大の争点 | サラリーキャップの導入(上限2億4,530万ドル、下限1億7,120万ドル) |
| オーナー側の姿勢 | 最低年俸の引き上げなど、選手側の要望に沿った案も出しているが、すべてサラリーキャップの受け入れが条件 |
| 選手会の姿勢 | サラリーキャップに反対。条件つきの譲歩案を「実質的な価値はほとんどない」と批判 |
| 直近の動き | 10月8日、MLBが154試合制などを提案 |
| 見通し | CBS Sportsは、新しい協定がなければ、オーナー側がロックアウトに踏み切ると見込まれていると報じている |
CBS Sportsは、2027年3月中旬までに新しい協定が合意に至らなければ、2027年シーズンの開幕が遅れたり、試合数が減ったりするリスクが高いとしています。
争点別に整理
1. サラリーキャップ
5月28日、MLBは最初の正式な提案を公表しました。主な内容は、次の4点です。
- 2027年のサラリーキャップ(福利厚生費を含む):2億4,530万ドル
- 2027年のサラリーフロア(下限、福利厚生費を含む):1億7,120万ドル
- 球団と選手の収益の50対50の分配
- 地元の収益の一元化と、球団間の均等な分配
CBS Sportsの試算(ぜいたく税基準額ベース)では、現時点で、上限を超えるのが9球団、下限に届かないのが12球団です。MLBは、エスクロー(給与の一部を留保する仕組み)の導入も求めています。
選手会は、強く反対しています。選手会のブルース・メイヤー暫定事務局長は、6月1日、サラリーキャップを「制度化された談合」と呼び、MLBの提案が2026年にあてはまった場合、選手は5億ドル以上を失うと推計しました。これに対しMLB側は、新制度の初年度に、選手は2026年より多くの報酬を得ると反論しています。
選手会は、5月27日の最初の提案で、年俸の低い球団に支出を促す「競争の健全性税」、ぜいたく税の最低基準額の2億4,400万ドルから3億ドルへの引き上げ、小規模市場の球団への収益分配の拡大などを求めました。
コミッショナーのマンフレッド氏は、6月3日、ぜいたく税などの金銭的なペナルティでは、競争均衡の問題を解決できなかったと発言しています。また、6月5日には、トランプ米大統領が、サラリーキャップの導入を支持する発言をしました。
2. 最低年俸
現在の最低年俸は、2026年で78万ドルです。選手会は、5月27日の提案で、この額を150万ドルに引き上げるよう求めました。MLBは、6月25日の提案で、2年以上のメジャー経験がある選手は100万ドル、2年未満の選手は90万ドルを示しています。
3. 契約の長さと後払い
6月25日の提案で、MLBは、フリーエージェントの契約に上限を設けることも求めました。他球団へ移る選手の契約は、最長5年で、サラリーキャップの15%まで(2027年の上限で換算すると、5年2億200万ドル)です。自球団に残る選手には、「コーナーストーン選手」という枠を設け、最長6年、キャップの16%まで(6年2億6,500万ドル)としています。
また、新規契約の後払いを認めないことも提案しました。詳しくは、後払い(ディファード)契約の記事で扱っています。一方、MLBは、選手会が求めていた、30歳以上の選手が5年でFA権を得られる制度と、クオリファイング・オファーの廃止を受け入れています。
4. ドラフト
6月18日、MLBは、ドラフトの大幅な変更を提案しました。ドラフトを20ラウンドから12ラウンドに減らし、高校生を対象から外し、国際ドラフトも導入する内容です。選手会は、国内外の新人選手への支払いが、5年間で10億ドル以上減ると反論しました。7月21日には、高校生の指名資格を維持することなどを求める対案を出しています。
5. ロースターのルール
8月27日、MLBは、ロースターの安定化を目的とした変更を提案しました。毎週月曜日にロースターを確定させる、26人枠のうち投手を14人まで認める、故障者リストの期間を短くする、といった内容です。フリーエージェントの契約を、ウィンターミーティング初日から12月21日まで制限する「クワイエット・ピリオド(Quiet Period)」も含まれます。選手会は、この制限が、選手の交渉力を弱めると批判しています。
6. 試合数とポストシーズン
10月8日、MLBは、レギュラーシーズンを162試合から154試合に減らし、毎週1日の休養日を設ける案を出しました。ディビジョンシリーズを5試合制から7試合制に延ばし、上位シードの球団が、ワイルドカードシリーズとディビジョンシリーズの対戦相手を選べる案も含みます。
提案の多くは、サラリーキャップの受け入れが条件
MLBが出した提案のうち、最低年俸の引き上げ、FA制度の変更、ロースターの変更、154試合制などは、いずれも、選手会がサラリーキャップとフロアを受け入れることが条件です。選手会は、6月25日の提案について、「見かけは改善だが、実質的な価値はほとんどない」と批判しました。
時系列
| 日付(2026年) | 出来事 |
|---|---|
| 5月12日 | 新しい労使協定に向けた交渉が、正式に始まる |
| 5月27日 | 選手会が最初の提案(最低年俸150万ドル、ぜいたく税基準額の引き上げなど) |
| 5月28日 | MLBが最初の提案(サラリーキャップ、フロア、収益の50対50分配) |
| 6月1日 | 選手会のメイヤー氏が、サラリーキャップを「制度化された談合」と批判 |
| 6月3日 | マンフレッド氏が、ぜいたく税では不十分だったと発言 |
| 6月5日 | トランプ米大統領が、サラリーキャップ導入を支持する発言 |
| 6月18日 | MLBが、ドラフトの大幅な変更と国際ドラフトを提案 |
| 6月25日 | MLBが、契約の長さの制限、最低年俸の引き上げ、後払い禁止などを提案 |
| 7月1日 | 選手会が、ロースターの規則などを提案 |
| 7月14日 | オールスターの日に、マンフレッド氏とメイヤー氏がそれぞれ会見 |
| 7月21日 | 選手会が、ドラフトの対案を提示 |
| 8月27日 | MLBが、ロースターの規則とフリーエージェント関連の制限を提案 |
| 9月2日 | ESPNの選手調査で、サラリーキャップへの反対が多数と判明 |
| 9月28日 | 「60試合以上が失われれば放映権契約が1年延長される」とThe Athleticが報道 |
| 10月8日 | MLBが、154試合制などを提案 |
| 11月3日 | MLBが、サラリーキャップの導入を2028年に遅らせる修正案を提案。選手会は反論 |
| 12月1日 | 現行の労使協定が失効(午後11時59分、東部標準時) |
選手の声:サラリーキャップへの反対が多数
ESPNが、年俸や在籍年数が異なる現役選手に行った匿名の調査では、サラリーキャップについての質問への回答のうち、16件が強い反対、5件が、賛成ではないものの議論には応じる姿勢でした。これはCBS Sportsのタイムライン記事が紹介している内容です。選手会の立場とおおむね一致していますが、全員が同じ意見ではない点を、MLB側は突こうとしていると、CBS Sportsは指摘しています。
「60試合」の分かれ目
The Athleticは、ロックアウトが5月下旬ごろまで続いて60試合以上が失われた場合、MLBの全国放送・配信の契約の多くが、1年延長されて2029年までになると報じました。マンフレッド氏は、各球団の配信権をまとめて収益を均等に分ける構想を持っており、契約の延長は、この計画を遅らせます。CBS Sportsは、これがリーグ側にとって、6月まで長引かせたくない強い理由になっていると分析しています。
ワールドシリーズに進んだ2球団は、下限を下回る
2026年のワールドシリーズに進んだブリュワーズとレイズの年俸は、MLBが提案するフロアを下回ります。ぜいたく税基準額は、福利厚生費を含む点で、MLBが提案するキャップ(福利厚生費を含む)と同じ基準で比べられます。Cot’s Contractsのぜいたく税基準額で見ると、ブリュワーズが1億5,470万ドル、レイズが1億1,290万ドルで、いずれも、提案の下限(1億7,120万ドル)に届きません。両球団の詳しい状況は、ワールドシリーズの記事で扱っています。
もしロックアウトが発動されたら
前回は、協定が失効した翌日の2021年12月2日の未明に、オーナー側がロックアウトを発動し、99日間続きました。
今回は、MLBが、ロックアウトに備えた手続きを記した通達を、球団に送っています。MLBトレード・ルーモアズによると、通達では、球団関係者が40人枠の選手と接触することを禁じる一方、選手が海外のリーグや冬季リーグでプレーすることは、妨げないとしています。40人枠に入っていないマイナーリーグの選手は、別の労使協定が適用されるため、ロックアウトの対象外で、2027年シーズンをプレーします。
ロックアウト中に何が起こるのかは、ロックアウトとはで詳しく扱っています。
読むときの注意点
- この記事は、2026年11月4日時点の情報です。 交渉は進行中で、内容は変わる可能性があります。
- MLBの提案内容は、あくまで提案です。選手会が受け入れたものではありません。
- 「上限を超える9球団、下限に届かない12球団」は、CBS Sportsの試算で、ぜいたく税基準額を基にしています。年俸の集計方法で、球団数は変わります。
- 日付は、すべて米国の現地日付です。
【まとめ】早見表
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 協定の失効 | 2026年12月1日午後11時59分(東部標準時) |
| サラリーキャップ案 | 上限2億4,530万ドル、下限1億7,120万ドル(2027年) |
| 最低年俸 | 現在78万ドル。MLBは100万ドル/90万ドル、選手会は150万ドルを提案 |
| 契約の制限 | 他球団へ移る選手は最長5年、自球団に残る選手は最長6年。後払いは禁止案 |
| 試合数 | MLBが154試合制を提案(10月8日) |
| 選手会の姿勢 | サラリーキャップに反対 |
| 前回のロックアウト | 2021年12月2日から99日間 |


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