ワールドシリーズを制した球団の選手は、優勝リングに加えて、ポストシーズンの分配金(ポストシーズン・シェア、postseason share)を受け取ります。2025年に連覇したドジャースの選手の、フルシェア(満額の1人分)は、48万4,748ドルでした。この分配金の財源、球団ごとの取り分、1人あたりの金額の決まり方、歴代の金額を、紐解きます。
※本記事の数字は、AP通信の配信記事を載せたFox Sports、MLB公式サイト、Sporticoなどの報道を基にまとめています。金額は、2025年までの実績です。
ポストシーズンの分配金とは
ポストシーズンの分配金は、ポストシーズンの入場料収入の一部を、選手の賞金として積み立てた「プール」(pool)から、進出した12球団へ配分される仕組みです。各球団の取り分は、どのラウンドまで進んだかで決まり、球団の選手が、その中から、誰にいくら配るかを投票で決めます。
フルシェアとは
分配金は、「シェア(share)」という単位で分けられます。フルシェア(full share)は、満額の1人分のことで、選手の分配金は、「フルシェア1人分がいくらか」で語られます。分け方は、次の3種類です。
| 種類 | 意味 | 対象 |
|---|---|---|
| フルシェア(full share) | 満額の1人分 | ワールドシリーズに出場できる選手と監督のうち、6月1日以降にチームにいた(故障者リストを含む)人 |
| パーシャルシェア(partial share) | 満額の一部 | 6月1日より後に加わった選手などで、チームの選手の投票で、満額の何割かが決まる |
| キャッシュ・アワード(cash award) | シェアの代わりに、現金で配る賞金 | 春季キャンプのコーチ、スカウト、グラウンドの整備員など、シェアの対象外のスタッフ |
対象の決め方は、AP通信の報道に基づきます。
財源:入場料収入の60%
プールの財源は、各ラウンドの入場料収入の60%です。ただし、実際に行われた試合数ではなく、最小の試合数で計算されます。Yahoo Sportsによると、対象となる試合は、次の通りです。
| ラウンド | 計算に使う試合 |
|---|---|
| ワイルドカードシリーズ | 各シリーズの最初の2試合(単一球場開催のため、ビジター球団の移動費を差し引く) |
| ディビジョンシリーズ | 最初の3試合 |
| リーグ優勝決定シリーズ | 最初の4試合 |
| ワールドシリーズ | 最初の4試合 |
対象になるのは、この最小の試合数までです。たとえば、ワールドシリーズが7試合までもつれても、第5戦から第7戦の入場料収入は、プールには含まれません(ディビジョンシリーズなら4試合目以降、ワイルドカードシリーズなら3試合目以降が対象外です)。AP通信によると、プールの金額は、球場の収容人数の影響も受けます。
プールに含まれない試合のお金は、どこへ行く?
最小の試合数を超えた試合の入場料収入は、プールには入らず、球団側の収入になります。労使協定の条文では、プールの財源は、最小の試合数分に限られます。そのうえで、Talk Sox(レッドソックスのファンサイト)やTrue Blue LA(ドジャースのブログ)は、オーナーが、プール対象の試合の残り(40%)と、それを超える試合の入場料収入の全額を受け取ると説明しています。たとえば、ワールドシリーズの第5戦から第7戦の入場料収入は、プールの財源になりません。
| 試合 | 選手のプール | 球団側 |
|---|---|---|
| 最小の試合数まで(ワールドシリーズなら第1〜4戦) | 入場料収入の60% | 残りの40%を、2球団で等分(MLB機構の取り分を含む) |
| それを超える試合(ワールドシリーズなら第5〜7戦) | 0% | プールに回さず、すべてを2球団で等分(MLB機構の取り分を含む) |
球団側の収入は、ホームかビジターかに関係なく、同じシリーズを戦う2球団で等分されると、約14年前のFanGraphsの記事と、2025年のブルージェイズの収益を分析したJays Centreの記事が、ともに伝えています。ただし、MLBの規則や労使協定の条文で、この点を直接確認できたわけではありません。
たとえば、2025年のワールドシリーズは、トロントで第1・2戦と第6・7戦、ロサンゼルスで第3〜5戦が行われました。この仕組みでは、プール対象外の第5戦(ロサンゼルス)の入場料収入を、ドジャースが全額受け取るわけではなく、第6・7戦(トロント)の入場料収入も、ブルージェイズが全額受け取るわけではありません。いずれも、2球団で等分されます。一方、入場料以外の飲食やグッズなどの収入は、この共有の対象に含まれません(FanGraphsによる)。
また、MLB機構(コミッショナー事務局)も、ポストシーズンの入場料収入の一部を受け取ります。過去の報道では、その割合は15%とされていますが、報道によって、計算の順序や割合の説明が異なります。本記事では、MLB機構の取り分の詳細は扱いません。
最小の試合数で計算する仕組みは、選手が試合を故意に落とす動機をなくすことも、目的の一つだと、Forbesは説明しています(2010年の記事)。試合数が増えても分配金が増えないため、結果を操作して、シリーズを長引かせる利益がなくなる、という考え方です。
なお、労使協定の条文には、ディビジョンシリーズが7試合制になった場合は、最初の4試合が対象になるという規定があります。MLBは、2026年10月8日の提案で、ディビジョンシリーズの7試合制を求めており、詳しくは、2026年版の労使交渉の記事で扱っています。
球団ごとの取り分
プールは、到達したラウンドに応じて、次の割合で配分されます。報道では、ワールドシリーズ優勝が36%、敗退が24%などとされています。ブルージェイズがプールの24%を受け取ったことも、報じられています。
| 到達したラウンド | 取り分 | 2025年の金額 |
|---|---|---|
| ワールドシリーズ優勝 | 36% | 約4,615万ドル(ドジャース) |
| ワールドシリーズ敗退 | 24% | 約3,076万ドル(ブルージェイズ) |
| リーグ優勝決定シリーズ敗退(2球団) | 各12% | 約1,538万ドル(ブリュワーズ、マリナーズ) |
| ディビジョンシリーズ敗退(4球団) | 各3.25% | 約417万ドル(計算値) |
| ワイルドカードシリーズ敗退(4球団) | 各0.75% | 約96万ドル(計算値) |
2025年のプール総額は、約1億2,819万ドルでした。リーグ優勝決定シリーズ敗退の2球団は、ブリュワーズとマリナーズで、どちらも1,538万ドルです。ディビジョンシリーズとワイルドカードシリーズの敗退球団の金額は、プール総額に割合をかけた、当サイトの計算値です。
なお、同じラウンドで敗退した球団どうしは、取り分が同じです。
1人あたりの金額の決まり方
投票の対象になる人
シェアの対象は、選手と監督だけではありません。認定アスレチックトレーナー2人と、ストレングス&コンディショニングコーチ1人も、チームの選手の投票で、シェアを受け取れます。春季キャンプのコーチ、スカウト、グラウンドの整備員は、シェアの対象外ですが、現金(キャッシュ・アワード)を受け取れます。
計算の流れ:ドジャースの例
2025年のドジャースは、プール約4,615万ドルを、次のように分けました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 球団のプール | 4,614万7,019ドル |
| フルシェア | 82人分 |
| パーシャルシェア | フルシェア12.5人分に相当(フルシェアとあわせて、94.5人分の計算) |
| キャッシュ・アワード | 34万ドル |
| フルシェア1人分 | 484,748ドル |
プールから現金を除いた金額を、94.5で割ると、おおむね、公表されたフルシェアの金額(48万4,748ドル)になります(パーシャルシェアの細かい端数による、わずかな差があります)。
金額が高い年は、配るシェアが少ない
同じプールでも、配るシェアの数が少ないほど、1人分は高くなります。AP通信によると、歴代最高のフルシェアは、2022年のアストロズの51万6,347ドルで、このときは、フルシェアを59人分しか出していませんでした。
歴代の金額
| 年 | 優勝球団 | フルシェア1人分 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2016年 | カブス | 36万8,872ドル | フルシェア66人分 |
| 2022年 | アストロズ | 51万6,347ドル | 歴代最高。フルシェア59人分 |
| 2023年 | レンジャーズ | 50万6,263ドル | |
| 2024年 | ドジャース | 47万7,441ドル | プール総額は、史上最高の約1億2,910万ドル |
| 2025年 | ドジャース | 48万4,748ドル | プール総額は約1億2,819万ドル |
2025年は、2024年よりプール総額がわずかに少なかったのに、ドジャースの1人分は、2024年より増えました。配ったシェアの数が、2024年より、フルシェアで3人分、パーシャルシェアで5人分少なかったためです。
他のラウンドの金額(2025年)
同じポストシーズンでも、到達したラウンドで、1人あたりの金額は大きく変わります。
| 球団 | 到達したラウンド | フルシェア1人分 |
|---|---|---|
| ドジャース | ワールドシリーズ優勝 | 484,748ドル |
| ブルージェイズ | ワールドシリーズ敗退 | 354,118ドル |
| マリナーズ | リーグ優勝決定シリーズ敗退 | 182,376ドル |
| ブリュワーズ | リーグ優勝決定シリーズ敗退 | 168,853ドル |
| ヤンキース | ディビジョンシリーズ敗退 | 47,318ドル |
| タイガース | ディビジョンシリーズ敗退 | 46,865ドル |
出典は、MLB公式サイトです。リーグ優勝決定シリーズで敗れた2球団は、プール総額は同じですが、配ったシェアの数(マリナーズ69人分、ブリュワーズ70人分)が違うため、1人分の金額も異なります。
年俸と比べると
2025年のフルシェア1人分(48万4,748ドル)は、MLBの最低年俸(2025年は76万ドル)の、約64%にあたります。大谷翔平選手の2025年の現金年俸(200万ドル)と比べると、約24%です。後者の契約の仕組みは、大谷翔平とドジャースの契約の記事で扱っています。
2026年のワールドシリーズ
2026年のワールドシリーズは、ブリュワーズとレイズの対戦で、どちらが勝っても、球団史上初の優勝になります。詳しくは、ワールドシリーズの記事で扱っています。
分配金の金額は、シリーズ終了後に決まります。2025年は、12月18日に公表されました。2026年の金額は、公表され次第、追記します。
読むときの注意点
- 金額は、2025年までの実績です。2026年の金額は、まだ公表されていません。
- フルシェア1人分の金額は、球団が何人分を配るかで変わります。 同じプールでも、配り方で、年ごとに金額が動きます。
- ディビジョンシリーズとワイルドカードシリーズの敗退球団の金額は、当サイトの計算値です。
- 計算は、報道された数字からの概算で、実際の分配額とは、端数で異なる場合があります。
【まとめ】早見表
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 分配金とは | ポストシーズンの入場料収入の一部を、選手の賞金として積み立てたプールから、進出した12球団へ配分する仕組み |
| 財源 | 各ラウンドの最小試合数分の入場料収入の60% |
| 配分 | ワールドシリーズ優勝36%、敗退24%、リーグ優勝決定シリーズ敗退各12%など |
| 2025年のプール総額 | 約1億2,819万ドル |
| 2025年のフルシェア(優勝) | 48万4,748ドル(ドジャース) |
| 歴代最高のフルシェア | 51万6,347ドル(2022年アストロズ) |
| 金額が決まる要素 | プール総額と、配るシェアの数 |
個人的に面白かったのは、分配金が、強さだけでなく、「何人に配るか」で決まる点です。2022年のアストロズが歴代最高額だったのは、配った人数が少なかったからでした。勝った球団の選手が、チームの裏方まで含めて、投票で分け合う仕組みは、野球が、選手だけで成り立つ競技ではないことを、表している気がします。


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