【メジャー用語解説】ウェーバー公示(Waivers)とは|DFAとの関係と「獲得申請の優先順位」の仕組み

用語解説

1. ウェーバー公示とは

ウェーバー(Waivers)とは、球団が選手を40人枠から外してマイナーへ降格させたり、契約を解除(リリース)したりする前に、必ず経由しなければならない「義務的な公開市場」です。

球団が選手をこの市場に「公示(Waivers にかける)」すると、他の29球団すべてに、その選手を契約ごと無条件で獲得できるチャンスが与えられます。これは球団の一存だけでは選手をこっそりマイナーに落とせない、MLB独自の透明性のあるルールです。

2. DFAとウェーバー公示の関係

多くの場合、ウェーバー公示はDFA(Designated for Assignment)の手続きの一部として発生します。

球団が選手をDFAすると、その選手は即座に40人枠から外れ、7日以内に次のいずれかの対応を取らなければなりません。

  1. トレード: 他球団との交渉がまとまれば移籍。
  2. ウェーバー公示: トレードが成立しなければ、この市場に選手を公示。
  3. 7日経過後の最終処理: ウェーバーがクリアされれば(誰も獲得を希望しなければ)、マイナー降格やリリースへ進む。

3. 2種類のウェーバー:「アウトライト」と「無条件リリース」

ウェーバー公示には目的によって2つの種類があります。

種類目的クリアされた場合の結果
アウトライト・ウェーバー(Outright Waivers)選手をマイナーへ降格させたい場合マイナーへの「アウトライト降格」が可能に(一部のベテランは拒否権あり)
無条件リリース・ウェーバー(Unconditional Release Waivers)選手との契約自体を解除したい場合選手はそのままFA(自由契約)に

いずれも**撤回不可(irrevocable)**という点が重要です。一度公示に出した選手を、他球団の獲得希望が出た後で「やっぱり取り下げます」とすることはできません。

4. 獲得申請(クレーム)の優先順位

ウェーバー公示された選手を「獲得申請(claim)」、つまり獲得したい球団が複数現れた場合、無条件で早い者勝ちにはなりません。

その時点での勝率が低い球団から優先的に獲得申請できる権利が与えられます。さらに、選手の元の所属球団と同じリーグの球団が、異なるリーグの球団よりも優先されます。この仕組みにより、成績下位の再建中の球団が、有力な掘り出し物を優先的に獲得しやすくなっています。

獲得申請が通った球団は、その選手の残り契約金をそのまま引き継ぐ義務を負います。そのため、高額年俸の主力選手はまず獲得申請が入らず、最低年俸に近い若手や中堅選手に申請が集まりやすい傾向にあります。

5. ベテラン選手が持つ「拒否権」

サービスタイム(メジャー通算登録日数)が一定以上のベテラン選手には、マイナー降格を拒否する特別な権利が与えられています。

  • サービスタイム5年超: マイナーへのアウトライト降格そのものを拒否できる。
  • サービスタイム3年超、または過去にアウトライトの経験がある選手: マイナー降格の代わりにFA(自由契約)を選択できる。

これにより、長年メジャーで活躍したベテランが、望まない形でマイナー暮らしを強いられる事態を防ぐ仕組みになっています。

6. 2019年のルール改定:「トレード・ウェーバー」の廃止

かつては、トレード期限(TDL)を過ぎた後でも、「撤回可能なトレード・ウェーバー(Revocable Trade Waivers)」を通せば、シーズン中いつでもトレードを成立させることができました。これは「8月のウェーバー・トレード劇場」とも呼ばれ、水面下の駆け引きが活発に行われる名物イベントでした。

しかし、2019年のルール改定により、この撤回可能なトレード・ウェーバーの制度そのものが廃止されました。現在は、トレード期限日以降にウェーバーを通しても、シーズン中の40人枠選手のトレードはできません。仕組みが「アウトライト・ウェーバー」と「無条件リリース・ウェーバー」の2種類にシンプル化され、以前より透明性の高いものになっています。

【まとめ】ウェーバー公示の早見表

項目概要
正式名称Waivers(ウェーバー)
発生タイミング主にDFA後の7日間の手続きの中で
撤回の可否不可(irrevocable)
獲得申請の優先順位勝率の低い球団が優先、同リーグ内が優先
獲得申請が通った球団の義務選手の残り契約金をそのまま引き継ぐ
ベテランの権利サービスタイム5年超は降格拒否可、3年超はFA選択可
2019年の変更点撤回可能なトレード・ウェーバー制度を廃止

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