フィラデルフィア・フィリーズの本拠地シチズンズ・バンク・パークは、前身の多目的スタジアム「ベテランズ・スタジアム」の解体と同時期に誕生した、野球専用球場です。命名権契約の内訳、市の税収による建設資金、そしてMLBでも特徴的な「非対称フィールド」の構造を紐解きます。
※本記事の建設地・命名権データは、Ballparks of Baseball、Philadelphia Inquirer、MLB公式サイトが公表した情報を基にまとめています。
1. 基本データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | シチズンズ・バンク・パーク(Citizens Bank Park) |
| 所在地 | ペンシルベニア州フィラデルフィア |
| 開場 | 2004年4月12日 |
| 収容人数 | 42,901人 |
| 建設費 | 約4億5,800万ドル |
| 所有者 | フィラデルフィア市 |
| 設計 | EwingCole、HOKスポーツ |
📍 所在地:Citizens Bank Park, Philadelphia, PA(Googleマップで見る)
2. 歴史:多目的スタジアムからの脱却
フィリーズは2004年の開場まで、NFLイーグルスと共用する多目的スタジアム「ベテランズ・スタジアム」(1971年開場)を本拠地としていました。
球場建設地として、都心の「リバティ・ヤーズ」(12th and Vine付近)、チャイナタウン隣接地、ベテランズ・スタジアム隣接地の3案が検討されました。しかし「リバティ・ヤーズ」案とチャイナタウン案は、いずれも地元住民の反対(特にチャイナタウン・コミュニティによる強い抵抗運動)や交通・駐車場の課題で頓挫。最終的に、旧ベテランズ・スタジアムのすぐ隣にあった駐車場スペース(現在の「フィラデルフィア・スポーツ・コンプレックス」内)が選ばれました。イーグルスの新スタジアム(リンカーン・フィナンシャル・フィールド)も同時期に、隣接地で建設が進められています。
3. 命名権:契約の内訳は「命名権」と「放送パッケージ」
2003年6月17日、球団はシチズンズ・バンク(現シチズンズ・フィナンシャル・グループ)と25年総額9,500万ドルの契約を締結しました。
この契約の内訳が興味深く、単純な命名権料は5,750万ドルにとどまり、残りの3,750万ドルは「フィリーズの放送メディアパッケージ」(広告露出)に対する対価として計上されています。契約は2029年まで続く予定です。
4. 建設資金:市の税金と球団の折半
建設費約4億5,800万ドルの資金調達は、公費と球団負担の折半という構造です。
- 公費(レンタカー税2%): 約半分(約2億2,900万ドル)
- 球団負担: 残り半分(約2億2,900万ドル)
- 建設費の超過分および球場の維持管理費は、球団側が負担する契約内容となっています
フィラデルフィア市議会は、イーグルスの新スタジアムと合わせて、主に観光客が負担するレンタカー税を財源にこの2つの球場建設を承認しました。
5. フィールド寸法:「モンティーズ・アングル」という非対称構造
- 左翼:329フィート
- 左中間:374フィート
- 「モンティーズ・アングル」(左中間〜中堅にかけての折れ曲がり部分):409フィート
- 中堅:401フィート
- 右中間:369フィート
- 右翼:330フィート
左中間から中堅にかけて、フェンスが複雑に折れ曲がる「モンティーズ・アングル」と呼ばれる区画があるのが特徴です。フェンスの高さが19フィートから12フィート8インチへと段階的に変化する、球場でも屈指の変則的な形状で、内野安打(インサイド・ザ・パーク・ホームラン)が生まれることもあります。
この名称は、球団社長兼CEOとして2004年の球場建設を主導し、この独特な角度のデザインを発案したデビッド・モンゴメリー氏にちなんでいます。モンゴメリー氏は2019年に72歳で死去しましたが、2024年8月17日、球団の「ウォール・オブ・フェイム」殿堂入りセレモニーの際に、この一角が正式に「モンティーズ・アングル」と命名されました。
【まとめ】シチズンズ・バンク・パーク早見表
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| 開場 | 2004年(ベテランズ・スタジアムの後継) |
| 収容人数 | 42,901人 |
| 命名権 | シチズンズ・バンクが25年9,500万ドル(2029年まで) |
| 建設費 | 約4億5,800万ドル(公費・球団負担で折半) |
| フィールドの特徴 | 「モンティーズ・アングル」という非対称な外野フェンス |
| 名物 | アッシュバーン・アレー(球団レジェンドの銅像エリア) |
個人的に興味深いのは、命名権契約の内訳です。「球場に名前をつける権利」と「試合放送での広告露出」を分けて金額を提示しているのは、他球場の命名権記事であまり見かけない構造で、契約の透明性という点でも参考になります。


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