タンパベイ・レイズは、2025年9月30日に20年間続いたスターンバーグ体制が終わり、地元フロリダの不動産開発業者パトリック・ザルプスキー氏を中心とする新オーナー体制へと移行しました。ハリケーン被害で本拠地を失ったままの異例の状況下での経営権移行の経緯と、新旧オーナーの顔ぶれを紐解きます。
※本記事のオーナー・買収データは、MLB公式サイト、ESPN、CBS Sports、Crain’s Cleveland Businessが公表した情報を基にまとめています。
1. 2025年、20年ぶりのオーナー交代
レイズは1995年の球団創設以来、3度目となるオーナー体制を迎えています。
買収の経緯: 2025年9月30日、ジャクソンビルの不動産開発業者パトリック・ザルプスキー氏率いる投資家グループが、前オーナーのスチュアート・スターンバーグ氏から球団を正式に取得しました。売却額は約17億ドルとされ、MLBオーナー会議で全会一致で承認されています。スターンバーグ氏は2004年に約2億ドルで球団の支配株を取得していたため、約21年で8.5倍という価値上昇になります。なお、スターンバーグ氏は売却後も少数株主としてチームに残っています。
球団の歴史: 1995年にMLBから拡張枠を得て創設された際の初代オーナーは故ビンス・ナイモリ氏で、2005年にスターンバーグ氏が後を継ぎました。今回のザルプスキー氏が3代目のオーナーとなります。
2. 主要オーナー・経営陣の顔ぶれ
パトリック・ザルプスキー(Patrick Zalupski)|筆頭オーナー
- 本業・役職: 住宅建設大手「ドリーム・ファインダーズ・ホームズ」創業者兼CEO。ジャクソンビルを拠点とする不動産開発業者
- 資産規模: Forbes推計で約14億〜17億ドル。率いる住宅建設会社自体の企業価値は34億ドルとされています
- 特徴: 44歳(2025年時点)。買収発表時には「タンパベイ・レイズの運営を託されたことは、この上ない栄誉だ」とコメントしています。球団をタンパベイ地区に残す意向を示していますが、本拠地をセントピーターズバーグではなくタンパに新設したいという意向を持っているとされています。
ビル・コスグローブ(Bill Cosgrove)|共同オーナー
- 本業: 住宅ローン大手「ユニオン・ホーム・モーゲージ」CEO
- 特徴: ザルプスキー氏とともに投資家グループの中心メンバーです。
ケン・バビー(Ken Babby)|球団CEO
- 本業: スポーツ経営会社「ファスト・フォワード・スポーツ・グループ」創業者。長年マイナーリーグ球団(アクロン・ラバーダックス、ジャクソンビル・ジャンボシュリンプ)を所有・経営してきた実績を持つ人物です
- 特徴: レイズのCEO就任に伴い、2025年12月9〜10日、保有していた2つのマイナーリーグ球団をプロスペクター・ベースボール・グループへ売却しました。メジャー球団の経営に専念するための決断でした。スタジアム交渉の指揮も任されており、タンパベイ地区での新球場確保という最重要課題の最前線に立っています。
スチュアート・スターンバーグ(Stuart Sternberg)|前オーナー(現少数株主)
- 本業: 元ゴールドマン・サックス・パートナー、ウォール街の投資家
- 資産規模: 推計約8億ドル
- 特徴: 2005年から20年にわたり球団を率い、「デビル・レイズ」から「デビル」を外す改称(2008年)を主導しました。アンドリュー・フリードマン氏(元ベア・スターンズのアナリスト、現ドジャース編成本部長)をGMに抜擢するなど、金融出身らしいデータ重視の編成で、2008年と2020年の2度のア・リーグ優勝に導きました。一方で、開幕時の選手総年俸でMLB29位または30位(最下位クラス)だったシーズンが8度あったなど、一貫した低予算路線でも知られていました。
3. 異例づくしの経営権移行:本拠地不在という特殊事情
今回のオーナー交代は、本拠地が実質的に存在しない状態で行われたという点で異例です。
2024年10月、本拠地トロピカーナ・フィールドの屋根がハリケーン・ミルトンで損壊し、使用不能に。レイズは2025年シーズンを、ヤンキースの春季キャンプ施設(タンパ)を間借りして戦う異例の1年を過ごしました。さらにスターンバーグ氏は2025年3月、セントピーターズバーグに13億ドルを投じて建設予定だった新球場計画からの撤退を表明しており、これが売却への流れを決定的にしたとされています。
オーナー交代を前にした2025年9月17日、球団はシルバーマン氏とオールド氏の退任を発表しましたが、これは偶然の人事ではなく、球団自身が「売却に伴うもの(as part of the pending sale)」と明言した、新体制移行を見据えた意図的な動きでした。シルバーマン氏(22年在籍、通算17年社長)はアドバイザリーボードに残り、オールド氏(21年在籍、通算11年社長)は新オーナー体制のシニアアドバイザーとして、移行期間を越えて残留しています。ザルプスキー氏にとって、まず着手すべき最大の課題は、タンパベイ地区における恒久的な新球場の確保です。
【レイズ経営陣の早見表】
| 役職・氏名 | 主な本業・背景 | チーム運営における役割 |
|---|---|---|
| パトリック・ザルプスキー | ドリーム・ファインダーズ・ホームズ創業者 | 筆頭オーナー(2025年9月〜) |
| ビル・コスグローブ | ユニオン・ホーム・モーゲージCEO | 共同オーナー |
| ケン・バビー | 元マイナーリーグ球団経営者(売却済み) | 球団CEO(2025年10月〜、スタジアム交渉担当) |
| スチュアート・スターンバーグ | 元ゴールドマン・サックス・パートナー | 前オーナー(2005〜2025年)・現少数株主 |
個人的には、「本拠地が存在しない状態で球団ごと売却される」という事態が、他球団ではまず考えられない異例さだと感じます。新オーナーのザルプスキー氏がまず取り組むべきは、選手編成以前に「どこで試合をするか」という根本的な問題です。タンパへの新球場構想が実現するのか、それとも振り出しに戻るのか、今後の動向を追っていきたい球団です。


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