長年オーナーを務めてきたサイドラー家からの球団売却が正式に完了し、サンディエゴ・パドレスは2026年8月、新体制での運営をスタートさせました。買収額はMLB史上最高となる39億ドル(約6200億円)。新たに筆頭株主となったのは、投資家のホセ・E・フェリシアーノ氏と、その妻でシンガー・実業家のクワンザ・ジョーンズ氏です。
本記事では、経営権移行の経緯と、新オーナー夫妻の経歴、そして今後の球団運営で見込まれるポイントを整理します。
1. 経営権移行の経緯
パドレスの前オーナーは、2023年に死去したピーター・サイドラー氏の家族でした。サイドラー氏は2012年にオーナー陣に加わり、2020年に筆頭株主へ。積極的な補強投資でチームをポストシーズン常連に育て上げ、ファンからの信頼も厚い人物でした。
その死去から約3年、サイドラー家は2025年11月に球団売却の検討を表明します。以降の流れは次の通りです。
- 2025年11月:サイドラー家が球団売却の検討を発表
- 2026年5月:フェリシアーノ氏・ジョーンズ氏グループとの売却合意を発表
- 2026年8月17日:MLBオーナー30球団による電話会議で売却を全会一致で承認、取引完了
- 2026年8月24日:ペトコパークで新オーナー就任会見
買収額の39億ドルは、2020年にスティーブ・コーエン氏がニューヨーク・メッツを買収した際の24億2000万ドルを大きく上回り、MLB球団売却として過去最高額を更新しました。
2. 新オーナー夫妻の横顔
ホセ・E・フェリシアーノ|筆頭オーナー
- 本業:投資会社クリアレイク・キャピタル共同創業者
- 出身:プエルトリコ
- 学歴:プリンストン大学卒、スタンフォード大学院で経営学修士取得
- その他の保有資産:イングランド・プレミアリーグのチェルシーFCを共同保有。NBAミネソタ・ティンバーウルブズにも少数株主として出資
フェリシアーノ氏は、MLBのガバナンス規定上の球団代表者(コントロールパーソン)に就任します。ラテン系の筆頭オーナーとしては、エンゼルスのアーテ・モレノ氏に次ぐ2人目です。
クワンザ・ジョーンズ|共同オーナー
- 本業:シンガーソングライター、実業家、慈善活動家
- 出身:カリフォルニア州ロサンゼルス
- 学歴:プリンストン大学卒(陸上競技の1部選手として在籍)
ジョーンズ氏は、MLB史上初の黒人女性筆頭オーナーとなります。就任会見では、自ら作詞・歌唱したパドレスのテーマソングを披露するなど、フェリシアーノ氏とは対照的な華やかな存在感を見せました。
【豆知識】就任会見で選んだ背番号
会見の最後、2人はそれぞれ自分の名前が入ったパドレスの新ユニフォームを着用しました。フェリシアーノ氏が選んだ番号は「21」。同じプエルトリコ出身の名選手、ロベルト・クレメンテにちなんだものです。一方のジョーンズ氏が選んだのは「00」。本人いわく「限界はゼロ、可能性は無限大」という意味を込めたといいます。
3. 出資比率と資金の出どころ
米メディア「ジ・アスレチック」の報道によると、フェリシアーノ氏・ジョーンズ氏夫妻が個人で取得する株式は球団全体の30〜40%程度とみられています。夫妻だけで買収資金の全額を負担するわけではなく、複数の投資家が名を連ねる形での資金調達となりました。
- 買収総額39億ドルのうち、夫妻個人の資金は約17億ドルとされる
- 残りは複数の投資家グループが分担して出資
- サイドラー家の一部関係者は、売却後も株式の一部を保有し続ける見通し
なお、フェリシアーノ氏個人の資産は、フォーブス誌の推計で2026年5月時点で39億ドル。今回の買収額とほぼ同水準の資産を、投資家として一代で築いてきたことになります。
4. クリアレイク・キャピタルとは
フェリシアーノ氏が共同創業者を務めるクリアレイク・キャピタル・グループは、2006年にベーダッド・エグバリ氏らとカリフォルニア州サンタモニカで設立された投資会社です。テクノロジー・工業・消費財セクターへの投資を主軸とし、運用資産(AUM)は2025年末時点で約835億ドル、関連事業を含めると900億ドルを超える規模に達しています。
- 設立:2006年
- 本拠地:米カリフォルニア州サンタモニカ
- 運用資産規模:約835億〜900億ドル(2025〜2026年時点)
- 主な投資分野:テクノロジー、工業、消費財関連
- 代表的な買収実績:ビジネス情報会社ダン・アンド・ブラッドストリート(約77億ドル)、医療ソフトウェア企業モドメド(約53億ドル)など
スポーツ分野への出資も積極的で、2022年にはトッド・ボーリー氏(ドジャース共同オーナー)らと組んだ投資コンソーシアム「ブルーコ」を通じ、イングランド・プレミアリーグの名門チェルシーFCを買収しています。フェリシアーノ氏にとって、パドレスはチェルシーに続く2つ目のプロスポーツ球団への大型出資となりました。
夫妻はまた、2014年に慈善事業体「Kwanza Jones & José E. Feliciano Initiative」を共同設立し、教育支援や地域振興を目的とした助成・インパクト投資活動も長年続けています。
5. 現体制と今後の運営方針
MLBの発表によると、球団CEOのエリック・グロイプナー氏、GMのA.J.プレラー氏は現職を継続し、日常的なチーム運営には引き続き当たります。フェリシアーノ氏・ジョーンズ氏は8月17日の声明で、次のような方針を示しました。
- サンディエゴにワールドシリーズ制覇をもたらし、毎年優勝を争える組織を築く
- 現場のスタッフとともに、意欲的かつ思慮深い投資を行う
- ペトコパークでの観戦体験の向上と、地域社会との結びつきを深める
就任会見でもフェリシアーノ氏は「ワールドシリーズを勝つことが必要。それだけがシンプルな目標だ」と発言。ジョーンズ氏も「頂点を目指すために全力を注ぐ」と語り、同地区に大谷翔平らを擁するドジャースの存在を念頭に置いた発言もありました。
【新体制 早見表】
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 筆頭オーナー | ホセ・E・フェリシアーノ(クリアレイク・キャピタル共同創業者) |
| 共同オーナー | クワンザ・ジョーンズ(シンガー・実業家) |
| 買収額 | 39億ドル(約6200億円、MLB史上最高額) |
| 夫妻の出資比率 | 球団全体の30〜40%程度(個人資金は約17億ドル) |
| クリアレイク・キャピタルのAUM | 約835億〜900億ドル(2025〜2026年時点) |
| フェリシアーノ氏の他球団出資 | プレミアリーグ・チェルシーFC(共同オーナー) |
| 前オーナー | サイドラー家(ピーター・サイドラー氏の死去後、家族が経営) |
| 承認日 | 2026年8月17日(MLBオーナー全会一致) |
| 球団CEO | エリック・グロイプナー(続投) |
| GM | A.J.プレラー(続投) |


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