シティ・コネクトの定義と目的
シティ・コネクト(City Connect)とは、MLBとオフィシャルユニフォームサプライヤーであるナイキ(Nike)が2021年から共同で展開している、各球団の本拠地となる都市の文化や歴史をテーマにした特別仕様のユニフォームシリーズです。
従来のユニフォームが「チームの伝統とプライド」を表現するものであるのに対し、シティ・コネクトは「チームと地元コミュニティ(ファンや街そのもの)との深いつながり」を表現することを目的としています。
既存の野球ファンの枠を超え、ストリートファッションや若年層のカルチャーにアピールするデザインが採用されているのが最大の特徴です。
伝統の破壊:チームカラーへの決別
メジャーリーグには、各球団に長年染み付いた「チームカラー」が存在します。しかし、シティ・コネクトシリーズにおいては、あえて本来のチームカラーを完全に捨て去り、地元の象徴的なカラーを採用するケースが珍しくありません。
これにより、発表時には従来の熱狂的なファンから賛否両論が巻き起こるものの、結果的にはこれまでにない斬新なデザインとして爆発的なグッズ売上を記録する現象が起きています。
象徴的なデザインの実例
シティ・コネクトのコンセプトを決定づけた、代表的な3球団のデザインコンセプトを紹介します。
【ボストン・レッドソックス】
本来のチームカラーである「赤と紺」を一切使用せず、なんと「黄色と水色」を採用しました。これは、ボストン市民の誇りである「ボストンマラソン」のゴール地点に引かれているラインの色(パトリオット・デイの象徴色)に由来しています。
【ワシントン・ナショナルズ】
首都ワシントンD.C.の春の風物詩であるポトマック川の「桜(チェリーブロッサム)」を全面に押し出したデザインです。ベースカラーのアントラシート(濃いグレー)は、街の建造物を象徴しています。
【ロサンゼルス・ドジャース】
MLB全30球団の中で最初に「2種類」の異なるシティ・コネクトを発表した球団です。
- 2021年(第1弾): ロサンゼルスの巨大なヒスパニック系ファンコミュニティに敬意を表し、青地のユニフォームにスペイン語で「Los Dodgers」と刻んだストリートテイストのデザインを採用しました。
- 2024年(第2弾): 「夢を追う街(City of dreams and dreamers)」をテーマに設定。ドジャースタジアムの座席カラーを模したカラフルな斑点(星の銀河)が散りばめられたクリーム色の生地に、初代本拠地「LAメモリアル・コロシアム」の看板から着想を得たフォントで「Los Angeles」と描かれています。裾のタグには名物実況アナウンサーの決め台詞である「#ITFDB(It’s Time For Dodger Baseball)」が印字されるなど、街と球団の歴史が詰め込まれています。
【2026年現在の補足】
なお、2024年時点ではドジャースが「唯一」2種類のシティ・コネクトを発表した球団でしたが、その後アストロズ、ナショナルズ、ジャイアンツ、ロッキーズ、ホワイトソックス、マーリンズ、ダイヤモンドバックス、レッドソックスなど複数球団が続々と2代目デザインを発表しており、2026年現在ではドジャースは「最初に」2代目を発表した球団という位置づけになっています。
ビジネス面での成功と影響
シティ・コネクトプログラムは、MLBのマーチャンダイジング(グッズ販売)において近年最大のヒット作となりました。
従来、ユニフォームを購入するのはスタジアムに頻繁に足を運ぶコアな野球ファンが中心でした。しかし、シティ・コネクトはそのストリートライクなデザイン性から、「野球のルールはあまり知らないが、地元の街を愛している」というライト層や、ファッションアイテムとして日常使いする若年層の取り込みに成功しました。
一部のチームでは、キャップやパーカーなどの関連アパレルを含め、シティ・コネクト関連商品だけで年間数百万ドルの追加収益を生み出しているとされており、MLBにおける「スポーツとストリートカルチャーの融合」を象徴する大成功のビジネスモデルとして定着しています。
【コラム】なぜ名門ヤンキースは「シティ・コネクト」を作らないのか?
ほぼ全チームがシティ・コネクトを着用して利益を上げる中、名門ニューヨーク・ヤンキースだけはこのプロジェクトに参加していません(2026年現在)。
その理由は、ヤンキースという球団が持つ「ブランドと伝統に対する異常なまでの誇り」です。ヤンキースは現在でもユニフォームの背中に名前を入れない」といった厳格な規律を守り続けています。
オーナーであるハル・スタインブレナー氏は、「我々のピンストライプ(ホーム)とロードグレー(ビジター)のユニフォームこそが野球界で最も象徴的なブランドであり、それに手を入れる必要はない」と明言しており、MLB機構やナイキからの打診を突っぱねています。
「どれだけグッズが売れて儲かろうとも、ヤンキースの伝統は決して売らない」というこの頑なな姿勢もまた、ファンにとってはたまらない魅力の一つとなっています。


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