MLB機構(コミッショナー事務局)とは
MLB機構(Office of the Commissioner of Baseball)とは、メジャーリーグ・ベースボール全体を統括・運営する最高機関です。
ルールの制定、スケジュールの作成、審判の雇用といった「競技運営」から、放映権の販売やスポンサー契約などの「ビジネス統括」まで、MLBに関するあらゆる権限を握っています。そのトップに立つのが「コミッショナー(Commissioner)」です。
コミッショナーの「2つの顔」と強大な権限
MLBのコミッショナーには、大きく分けて「プロ野球界の最高権力者」としての顔と、「球団オーナーたちの代弁者」としての2つの顔があります。
1. 野球界の最高権力者(Best interests of baseball)
MLBの規約には、コミッショナーに「野球界の最善の利益(Best interests of baseball)」を守るための強大な絶対権限が与えられています。
もし野球の品位を汚す行為や、リーグの不利益になる事態が発生した場合、コミッショナーの独断で選手や監督、さらには球団オーナーに対してすら「永久追放」や「巨額の罰金」などの厳罰を下すことが法的に認められています。
(※過去のピート・ローズの賭博問題や、アストロズのサイン盗み事件における厳罰も、この権限によるものです)
2. 労使交渉における「オーナー側の代表」
コミッショナーは中立な立場の裁定者に見えますが、実態としては「全30球団のオーナーによる投票で選出され、彼らから高額な報酬を受け取っている最高経営責任者(CEO)」です。
そのため、労使協定(CBA)の交渉やロックアウトといった労働争議においては、必然的に「球団オーナー側の代表(経営者側)」として立ち回り、選手の権利拡大を目指す労働組合(MLB選手会)と真っ向から対立する役割を担います。
【データ】100億ドル規模の巨大ビジネスマシン
MLB機構のもう一つの重要な顔は、年間100億ドル(約1兆5000億円)以上の売上を叩き出す巨大なビジネス・コングロマリット(複合企業)の司令塔としての役割です。
MLBにおける収益は、各球団が独自に稼ぐ「ローカル収益」と、MLB機構が一括で稼いで全30球団に均等分配する「中央収益(セントラル・レベニュー)」の2つに分かれます。
【MLB機構が統括する主な中央収益】
| 収益源 | 概要 | 規模の目安(年間) |
| 全国テレビ放映権 | FOX、ESPN、TBSといった全米ネットワークとの独占放送契約。 | 約15億〜20億ドル |
| 国際放映権 | 日本をはじめとする世界各国への放映権販売。 | 数億ドル規模 |
| 公式スポンサー契約 | ナイキ(ユニフォーム)、マスターカード、Apple等のグローバル契約。 | 10億ドル超 |
| ライセンスビジネス | MLBロゴや全球団の商標を使用したグッズ販売のロイヤリティ。 | 10億ドル超 |
MLB機構が稼ぎ出したこれらの中央収益は、全30球団に(市場の大小に関わらず)均等に分配されます。これにより、観客動員が少ないスモールマーケットの球団であっても、毎年確実に数十億円規模の分配金を受け取ることができ、球団経営の安定化に大きく寄与しています。
IT企業としてのMLB(デジタル戦略の先駆者)
MLB機構のビジネスを語る上で欠かせないのが、スポーツ界で最も成功したIT戦略です。
MLB機構は2000年に「MLB Advanced Media(MLBAM)」というデジタル部門を設立しました。彼らは他競技に先駆けて全試合のネット配信(MLB.TV)を構築し、さらに「スタットキャスト(Statcast)」のような世界最高峰のデータ解析システムを自社開発しました。
彼らの動画配信技術はあまりにも優秀だったため、ディズニーやHBOといった世界的なエンタメ企業が自社の動画配信サービスの基盤としてMLBのシステムをこぞって採用しました。MLB機構は後にこの技術部門(BAMTech)をディズニーに数十億ドルで売却しており、「MLBは単なるスポーツリーグではなく、シリコンバレー顔負けの巨大IT企業である」と高く評価されています。


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